に隠すような秘密をあなたはたくさん持っていそうだ」
とも恨んでいた。
その日御所ではいろんな決定事項が多くて源氏も終日宮中で暮らした。新郎はその翌朝に早く手紙を送り、第二夜からの訪問を忠実に続けることが一般の礼儀であるから、自身で出かけられないまでも、せめて手紙を送ってやりたいと源氏は思っていたが、閑暇《ひま》を得て夕方に使いを出すことができた。雨が降っていた。こんな夜にちょっとでも行ってみようというほどにも源氏の心を惹《ひ》くものは昨夜の新婦に見いだせなかった。
あちらでは時刻を計って待っていたが源氏は来ない。命婦《みょうぶ》も女王をいたましく思っていた。女王自身はただ恥ずかしく思っているだけで、今朝来るべきはずの手紙が夜になってまで来ないことが何の苦労にもならなかった。
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夕霧の晴るるけしきもまだ見ぬにいぶせさ添ふる宵《よひ》の雨かな
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この晴れ間をどんなに私は待ち遠しく思うことでしょう。
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と源氏の手紙にはあった。来そうもない様子に女房たちは悲観した。返事だけはぜひお書きになるようにと勧めても、まだ昨
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