ていた。源氏の洗面の水も、朝の食事もこちらへ運ばれた。遅《おそ》くなってから起きて、源氏は少納言に、
「女房たちがいないでは不自由だろうから、あちらにいた何人かを夕方ごろに迎えにやればいい」
と言って、それから特に小さい者だけが来るようにと東の対《たい》のほうへ童女を呼びにやった。しばらくして愛らしい姿の子が四人来た。女王は着物にくるまったままでまだ横になっていたのを源氏は無理に起こして、
「私に意地悪をしてはいけませんよ。薄情な男は決してこんなものじゃありませんよ。女は気持ちの柔らかなのがいいのですよ」
もうこんなふうに教え始めた。姫君の顔は少し遠くから見ていた時よりもずっと美しかった。気に入るような話をしたり、おもしろい絵とか遊び事をする道具とかを東の対へ取りにやるとかして、源氏は女王の機嫌《きげん》を直させるのに骨を折った。やっと起きて喪服のやや濃い鼠《ねずみ》の服の着古して柔らかになったのを着た姫君の顔に笑《え》みが浮かぶようになると、源氏の顔にも自然笑みが上った。源氏が東の対へ行ったあとで姫君は寝室を出て、木立ちの美しい築山《つきやま》や池のほうなどを御簾《みす》の中から
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