王さんのことが気になってなりません。
[#ここで字下げ終わり]
 源氏からの挨拶《あいさつ》はこれで惟光が代わりの宿直《とのい》をするわけである。
「困ってしまう。将来だれかと御結婚をなさらなければならない女王様を、これではもう源氏の君が奥様になすったような形をお取りになるのですもの。宮様がお聞きになったら私たちの責任だと言っておしかりになるでしょう」
「ねえ女王様、お気をおつけになって、源氏の君のことは宮様がいらっしゃいました時にうっかり言っておしまいにならないようになさいませね」
 と少納言が言っても、小女王は、それが何のためにそうしなければならないかがわからないのである。少納言は惟光の所へ来て、身にしむ話をした。
「将来あるいはそうおなりあそばす運命かもしれませんが、ただ今のところはどうしてもこれは不つりあいなお間柄だと私らは存じますのに、御熱心に御縁組のことをおっしゃるのですもの、御酔興か何かと私どもは思うばかりでございます。今日も宮様がおいでになりまして、女の子だからよく気をつけてお守りをせい、うっかり油断をしていてはいけないなどとおっしゃいました時は、私ども何だか平気でいら
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