いいし、女王は何人も若い子がいるからいっしょに遊んでいれば非常にいいと思う」
などとお言いになった。そばへお呼びになった小女王の着物には源氏の衣服の匂《にお》いが深く沁《し》んでいた。
「いい匂いだね。けれど着物は古くなっているね」
心苦しく思召《おぼしめ》す様子だった。
「今までからも病身な年寄りとばかりいっしょにいるから、時々は邸のほうへよこして、母と子の情合いのできるようにするほうがよいと私は言ったのだけれど、絶対的にお祖母《ばあ》さんはそれをおさせにならなかったから、邸のほうでも反感を起こしていた。そしてついにその人が亡《な》くなったからといってつれて行くのは済まないような気もする」
と宮がお言いになる。
「そんなに早くあそばす必要はございませんでしょう。お心細くても当分はこうしていらっしゃいますほうがよろしゅうございましょう。少し物の理解がおできになるお年ごろになりましてからおつれなさいますほうがよろしいかと存じます」
少納言はこう答えていた。
「夜も昼もお祖母《ばあ》様が恋しくて泣いてばかりいらっしゃいまして、召し上がり物なども少のうございます」
とも歎《なげ》い
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