かな
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二度繰り返させたのである。気のきいたふうをした下仕《しもづか》えの女中を出して、
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立ちとまり霧の籬《まがき》の過ぎうくば草の戸ざしに障《さは》りしもせじ
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と言わせた。女はすぐに門へはいってしまった。それきりだれも出て来ないので、帰ってしまうのも冷淡な気がしたが、夜がどんどん明けてきそうで、きまりの悪さに二条の院へ車を進めさせた。
かわいかった小女王を思い出して、源氏は独《ひと》り笑《え》みをしながら又寝《またね》をした。朝おそくなって起きた源氏は手紙をやろうとしたが、書く文章も普通の恋人扱いにはされないので、筆を休め休め考えて書いた。よい絵なども贈った。
今日は按察使《あぜち》大納言家へ兵部卿《ひょうぶきょう》の宮が来ておいでになった。以前よりもずっと邸が荒れて、広くて古い家に小人数でいる寂しさが宮のお心を動かした。
「こんな所にしばらくでも小さい人がいられるものではない。やはり私の邸のほうへつれて行こう。たいしたむずかしい所ではないのだよ。乳母《めのと》は部屋《へや》をもらって住んでいれば
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