う解釈すべきであろうとあきれているばかりだった。手紙のほうにもねんごろに申し入れが書かれてあって、
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一つずつ離してお書きになる姫君のお字をぜひ私に見せていただきたい。
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 ともあった。例の中に封じたほうの手紙には、

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浅香山浅くも人を思はぬになど山の井のかけ離るらん
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 この歌が書いてある。返事、

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汲《く》み初《そ》めてくやしと聞きし山の井の浅きながらや影を見すべき
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 尼君が書いたのである。惟光《これみつ》が聞いて来たのもその程度の返辞であった。
「尼様の御容体が少しおよろしくなりましたら京のお邸《やしき》へ帰りますから、そちらから改めてお返事を申し上げることにいたします」
 と言っていたというのである。源氏はたよりない気がしたのであった。
 藤壺の宮が少しお病気におなりになって宮中から自邸へ退出して来ておいでになった。帝《みかど》が日々恋しく思召《おぼしめ》す御様子に源氏は同情しながらも、稀《まれ》にしかないお実家《さと》住まいの機会
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