人たちだ、中の品がおもしろいといっても自分には我慢のできぬこともあるだろうと源氏は思った。
 紀伊守が出て来て、灯籠《とうろう》の数をふやさせたり、座敷の灯《ひ》を明るくしたりしてから、主人には遠慮をして菓子だけを献じた。
「わが家はとばり帳《ちょう》をも掛けたればって歌ね、大君来ませ婿にせんってね、そこへ気がつかないでは主人の手落ちかもしれない」
「通人でない主人でございまして、どうも」
 紀伊守は縁側でかしこまっていた。源氏は縁に近い寝床で、仮臥《かりね》のように横になっていた。随行者たちももう寝たようである。紀伊守は愛らしい子供を幾人も持っていた。御所の侍童を勤めて源氏の知った顔もある。縁側などを往来《ゆきき》する中には伊予守の子もあった。何人かの中に特別に上品な十二、三の子もある。どれが子で、どれが弟かなどと源氏は尋ねていた。
「ただ今通りました子は、亡《な》くなりました衛門督《えもんのかみ》の末の息子《むすこ》で、かわいがられていたのですが、小さいうちに父親に別れまして、姉の縁でこうして私の家にいるのでございます。将来のためにもなりますから、御所の侍童を勤めさせたいようですが
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