という若いよい女房たちと冗談《じょうだん》を言いながら、暑さに部屋着だけになっている源氏を、その人たちは美しいと思い、こうした接触が得られる幸福を覚えていた。大臣も娘のいるほうへ出かけて来た。部屋着になっているのを知って、几帳《きちょう》を隔てた席について話そうとするのを、
「暑いのに」
 と源氏が顔をしかめて見せると、女房たちは笑った。
「静かに」
 と言って、脇息《きょうそく》に寄りかかった様子にも品のよさが見えた。
 暗くなってきたころに、
「今夜は中神のお通り路《みち》になっておりまして、御所からすぐにここへ来てお寝《やす》みになってはよろしくございません」
 という、源氏の家従たちのしらせがあった。
「そう、いつも中神は避けることになっているのだ。しかし二条の院も同じ方角だから、どこへ行ってよいかわからない。私はもう疲れていて寝てしまいたいのに」
 そして源氏は寝室にはいった。
「このままになすってはよろしくございません」
 また家従が言って来る。紀伊守《きいのかみ》で、家従の一人である男の家のことが上申される。
「中川辺でございますがこのごろ新築いたしまして、水などを庭へ引
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