激動の中を行く
与謝野晶子

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)勃興《ぼっこう》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)財閥の成員|乃至《ないし》奉仕者

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)戦前においてさまで[#「さまで」に傍点]
−−

 人生は静態のものでなくて動態のものであり、それの固定を病的状態とし、それの流動を正統状態として、常に動揺変化の中にあるものであるということは説明の必要もないことですが、戦後の世界は戦前においてさまで[#「さまで」に傍点]優勢でなかった思想が勃興《ぼっこう》し初めたために、経済的、政治的、社会的のいずれの方面においても、これまでになかった急激な動揺変化を生じて、それがために人間の思想と実際生活とは紛糾に紛糾を重ねようとしています。即ち今日の新しい合言葉となっている人道主義とか、民主主義とか、国際平和主義とかいうものは、戦前において学者、詩人、社会改良論者、宗教家等の空想として、大多数の人類から軽視されていたものですが、今は普魯西《プロシヤ》のカイゼル父子とそれを繞《めぐ》っ
次へ
全21ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング