のがあります。或婦人雑誌に法学博士|三潴信三《みつましんぞう》氏が婦人職業問題に反対して「欧米において婦人が何々の職業を与えられているからというが如き単なる理由の下に、婦人の職業を徒《いたず》らに奨励するが如きは、家族主義の我国としては破壊的の考えといわねばなりません。……婦人が進んで家庭から離れようとする如き考えは決して健全なものと思われません」といわれた如きは、博士こそ余りに「単なる理由」の下に軽率なる断案を下されたもので、博士は我国の女工八十万の家庭事情が経済的と倫理的の両方面から、彼らを職業婦人たらしめねば置かないという重要な理由を看過しておられるのです。彼らにしてもし工場労働者とならなかったら、餓死するか醜業婦となって堕落するかの外に道はないでしょう。
三潴博士のお説で更に笑うべきは「外国の事柄を借らずともよい」という単なる理由から、西洋音楽を排斥し、サンタクロスの代りに大黒様の名を挙げ、家庭においてパパとかママとか呼ばせていることを攻撃し、正月の遊びにも西洋趣味の物でなくて東海道々中|双六《すごろく》を用いて欲しいと望んでおられる事です。日本音楽が西洋音楽に比べて非常に劣
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