ふ雑誌新たに出でたりとて、折々送つてもらひ候うちに、雨江《うこう》様桂月様今お一人の新体詩その雑誌に出ではじめ、初めて私|藤村《とうそん》様の外に詩をなされ候|方《かた》沢山日本におありと知りしに候。その頃からの詩人にておはし候桂月様、なにとて曾孫《ひまご》のやうなる私すらおぼろげに知り候歌と眼の前の事との区別を、桂月様どう遊ばし候にや。日頃年頃桂月様をおぢい様のやうに敬《うやま》ひ候私、これはちと不思議に存じ候。
 なほ桂月様私の新体詩まがひのものを、つたなし/\、柄になきことすなと御|深切《しんせつ》にお叱《しか》り下され候ことかたじけなく思ひ候。これは私のとがにあらず、君のいつも/\長きもの作れと勧め給ふよりの事に候。しかしまた私考へ候に、私の作り候ものの見苦しきは仰せられずとものこと、桂月様をおぢい様、私を曾孫と致し候へば、御立派な新体詩のお出来なされ候桂月様は博士、やう/\この頃君に教へて頂きて新体詩まがひを試み候私は幼稚園の生徒にて候。幼稚園にてかたなりのままに止め候はむこと、心外なやうにも思ひ候。
 かやうなること思ひつづけて、東海道の汽車は大阪まで乗り通し候ひき。光《ひ
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