なるべし、物言ひのてきはきして心の奥にかげなきは、江戸のお生れの人かと申し候ゆゑ、あれは緑雨《りよくう》様や宅のお友達、数学の天才にて、こちらの朝日の角田様も古く知り給ふ方《かた》、当節は文学を専門になさる人たちよりも、かやうな学問のちがひし人様の方々に、まことのおえらき人あるなりと申し候へば、いつの世でも大抵はさうと、母たいさう知つたかぶりな顔を致し候。
 庭のコスモス咲き出で候はば、私帰るまであまりお摘《つ》みなされずにお残し下されたく、軒の朝顔かれ/″\の見ぐるしきも、何卒《なにとぞ》帰る日まで苅《か》りとらせずにお置きねがひあげ候。
 あす天気よろしくば、光に堺の浜みせてやれと母申して寐たまひ候。
[#下げて、地より1字あきで](『明星』一九〇四年一一月)



底本:「与謝野晶子評論集」岩波文庫、岩波書店
   1985(昭和60)年8月16日初版発行
   1994(平成6)年6月6日10刷発行
初出:「明星」新詩社
   1904(明治37)年11月号
入力:Nana ohbe
校正:門田裕志
2002年1月10日公開
青空文庫ファイル:
このファイルはインターネットの図
前へ 次へ
全13ページ中12ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング