」
二匹の犬はかう云ふが早いか、竜騎兵の士官でも乗せてゐるやうに、昂然《かうぜん》と街道を走つて行つた。
魔女
魔女は箒《はうき》に跨《またが》りながら、片々《へんぺん》と空を飛んで行つた。
それを見たものが三人あつた。
一人《ひとり》は年をとつた月だつた。これは又かと云ふやうに、黙々と塔の上にかかつてゐた。
もう一人は風見《かざみ》の鶏だつた。これはびつくりしたやうに、ぎいぎい桿《さを》の上に啼きまはつた。
最後の一人は大学教授 Dundergutz 先生だつた。これはその後《ご》熱心に、魔女が空を飛んで行つたのは、箒が魔女を飛ばせたのか、魔女が箒を飛ばせたものか、どちらかと云ふ事を研究し出した。
何《なん》でも先生は今日《こんにち》でも、やはり同じ大問題を研究し続けてゐるさうである。
魔女は箒に跨りながら、昨夜《ゆうべ》も大きな蝙蝠《かうもり》のやうに、片々と空を飛んで行つた。
遊び
崖に臨んだ岩の隙《すき》には、一株の羊歯《しだ》が茂つてゐる。トムはその羊歯の葉の上に、さつきから一匹の大土蜘蛛《おほつちぐも》と、必死の格闘を続けてゐる
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