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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)勿論《もちろん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)重門|尽《ことごと》く
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)兪※[#「木+越」、第3水準1−86−11]《ゆゑつ》
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クロオド・フアレエルの作品を始めて日本に紹介したのは多分堀口大学氏であらう。僕はもう六七年前に「三田文学」の為に同氏の訳した「キツネ」艦の話を覚えてゐる。
「キツネ」艦の話は勿論《もちろん》、フアレエルの作品に染《し》みてゐるものは東洋の鴉片《アヘン》の煙である。僕はこの頃矢野目源一氏の訳した、やはりフアレエルの「静寂の外に」を読み、もう一度この煙に触れることになつた。尤《もつと》もこの「静寂の外に」は芳《かんば》しい鴉片の匂の外にも死人の匂をも漂はせてゐる。「ポオとボオドレエル」兄弟商会の造つた死人の匂をも漂はせてゐる。
「おや、聞えたぞ。いや、空耳だらう。己にはわからない。死人の土地から洩れて来るにしてはあんまり音が大き過ぎる
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