起こるのを聞いた。それから、月に白《しら》んだ小路《こうじ》をふさいで、黒雲に足のはえたような犬の群れが、右往左往に入り乱れて、餌食《えじき》を争っているさまが見えた。最後に――それはほとんど寸刻のいとまもなかったくらいである。すばやく彼を駆けぬけた狩犬の一頭が、友を集めるように高くほえると、そこに狂っていた犬の群れは、ことごとく相呼び相答えて、一度に※[#「けものへん+言」、第4水準2−80−36]々《ぎんぎん》の声をあげながら、見る間に彼を、その生きて動く、なまぐさい毛皮の渦巻《うずま》きの中へ巻きこんだ。深夜、この小路に、こうまで犬の集まっていたのは、もとよりいつもある事ではない。次郎は、この廃都をわが物顔に、十二十と頭をそろえて、血のにおいに飢えて歩く、獰猛《どうもう》な野犬の群れが、ここに捨ててあった疫病《えやみ》の女を、宵《よい》のうちから餌食にして、互いに牙《きば》をかみながら、そのちぎれちぎれな肉や骨を、奪い合っているところへ、来たのである。
犬は、新しい餌食を見ると、一瞬のいとまもなく、あらしに吹かれて飛ぶ稲穂のように、八方から次郎へ飛びかかった。たくましい黒犬が、
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