は全共和制度の嘘である。この嘘だけはソヴイエツトの治下にも消滅せぬものと思はなければならぬ。

       又

 一体になつた二つの観念を採り、その接触点を吟味すれば、諸君は如何に多数の嘘に養はれてゐるかを発見するであらう。あらゆる成語はこの故に常に一つの問題である。

       又

 我我の社会に合理的外観を与へるものは実はその不合理の――その余りに甚しい不合理の為ではないであらうか?

       レニン

 驚いたね、レニンと言ふ人の余りに当り前の英雄なのには。

       賭博

 偶然即ち神と闘ふものは常に神秘的威厳に満ちてゐる。賭博者《とばくしや》も亦この例に洩れない。

       又

 古来賭博に熱中した厭世主義者のないことは如何に賭博の人生に酷似してゐるかを示すものである。

       又

 法律の賭博を禁ずるのは賭博に依る富の分配法そのものを非とする為ではない。実は唯その経済的ディレツタンティズムを非とする為である。

       懐疑主義

 懐疑主義も一つの信念の上に、――疑ふことは疑はぬと言ふ信念の上に立つものである。成程それは矛盾
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