ものである。彼等の最も知りたいのは愛とは何かと言うことではない。クリストは私生児かどうかと言うことである。
武者修業
わたしは従来武者修業とは四方の剣客と手合せをし、武技を磨くものだと思っていた。が、今になって見ると、実は己ほど強いものの余り天下にいないことを発見する為にするものだった。――宮本武蔵伝読後。
ユウゴオ
全フランスを蔽《おお》う一片のパン。しかもバタはどう考えても、余りたっぷりはついていない。
ドストエフスキイ
ドストエフスキイの小説はあらゆる戯画に充《み》ち満《み》ちている。尤《もっと》もその又戯画の大半は悪魔をも憂鬱《ゆううつ》にするに違いない。
フロオベル
フロオベルのわたしに教えたものは美しい退屈もあると言うことである。
モオパスサン
モオパスサンは氷に似ている。尤も時には氷砂糖にも似ている。
ポオ
ポオはスフィンクスを作る前に解剖学を研究した。ポオの後代を震駭《しんがい》した秘密はこの研究に潜んでいる。
森鴎外
畢竟鴎外先生は軍服に剣を下げた希臘人《ギリシアじん》である。
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