保吉の手帳から
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)保吉《やすきち》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)その時|欠伸《あくび》まじりに
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「勹<夕」、第3水準1−14−76]
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わん
ある冬の日の暮、保吉《やすきち》は薄汚《うすぎたな》いレストランの二階に脂臭《あぶらくさ》い焼パンを齧《かじ》っていた。彼のテエブルの前にあるのは亀裂《ひび》の入った白壁《しらかべ》だった。そこにはまた斜《はす》かいに、「ホット(あたたかい)サンドウィッチもあります」と書いた、細長い紙が貼《は》りつけてあった。(これを彼の同僚の一人は「ほっと暖いサンドウィッチ」と読み、真面目《まじめ》に不思議《ふしぎ》がったものである。)それから左は下へ降りる階段、右は直《すぐ》に硝子《ガラス》窓だった。彼は焼パンを齧りながら、時々ぼんやり窓の外を眺めた。窓の外には往来の向うに亜鉛屋根《トタンやね》の古
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