そんなことは当然に違いありません。しかしその犬小屋の前には米粒《こめつぶ》ほどの小ささに、白い犬が一匹坐っているのです。清らかに、ほっそりと。――白はただ恍惚《こうこつ》とこの犬の姿に見入りました。
「あら、白は泣いているわよ。」
お嬢さんは白を抱《だ》きしめたまま、坊ちゃんの顔を見上げました。坊ちゃんは――御覧なさい、坊ちゃんの威張《いば》っているのを!
「へっ、姉さんだって泣いている癖に!」
[#地から1字上げ](大正十二年七月)
底本:「芥川龍之介全集5」ちくま文庫、筑摩書房
1987(昭和62)年2月24日第1刷発行
1995(平成7)年4月10日第6刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版芥川龍之介全集」筑摩書房
1971(昭和46)年3月〜1971(昭和46)年11月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:j.utiyama
校正:もりみつじゅんじ
1999年3月1日公開
2004年3月9日修正
青空文庫作成ファイル:
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