《やはん》の隅田川《すみだがは》は何度見ても、詩人S・Mの言葉を越えることは出来ない。――「羊羹《やうかん》のやうに流れてゐる。」
十一
「××さん、遊びませう」と云う子供の声、――あれは音《おん》の高低を示せば、×× San[#「San」は30度位右上がり] Asobi−ma show[#「show」は30度位右上がり] である。あの音《おん》はいつまで残つてゐるかしら。
十二
火事はどこか祭礼に似てゐる。
十三
東京の冬は何よりも漬《つ》け菜《な》の茎の色に現《あらは》れてゐる。殊に場末《ばすゑ》の町々では。
十四
何かものを考へるのに善《よ》いのはカツフエの一番隅の卓子《テエブル》、それから孤独を感じるのに善《よ》いのは人通りの多い往来《わうらい》のまん中、最後に静かさを味ふのに善いのは開幕中の劇場の廊下《らうか》、……
[#地から1字上げ](昭和二年二月)
底本:「芥川龍之介全集第四巻」筑摩書房
1971(昭和46)年6月5日初版第1刷発行
1971(昭和46)年10月5日初版第5刷発行
入力校正:j.utiyama
1999年2月15日公開
2003年10月7日修正
青空文庫作成ファイル:
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