? あなたがたは一体何ものです?
神将 我々は天《あめ》が下《した》の陰陽師《おんみょうじ》、安倍《あべ》の晴明《せいめい》の加持《かじ》により、小町を守護する三十番神《さんじゅうばんじん》じゃ。
使 三十番神! あなたがたはあの嘘つきを、――あの男たらしを守護するのですか?
神将 黙れ! か弱い女をいじめるばかりか、悪名《あくみょう》を着せるとは怪《け》しからぬやつじゃ。
使 何が悪名です? 小町はほんとうに、嘘つきの男たらしではありませんか?
神将 まだ云うな。よしよし、云うならば云って見ろ。その耳を二つとも削《そ》いでしまうぞ。
使 しかし小町は現にわたしを……
神将 (憤然《ふんぜん》と)この戟《ほこ》を食《く》らって往生《おうじょう》しろ! (使に飛びかかる)
使 助けてくれえ! (消え失せる)
四
数十年|後《ご》、老いたる女|乞食《こじき》二人、枯芒《かれすすき》の原に話している。一人は小野の小町、他の一人は玉造《たまつくり》の小町。
小野の小町 苦しい日ばかり続きますね。
玉造の小町 こんな苦しい思いをするより、死んだ方がましか
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