南瓜
芥川龍之介

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)南瓜《かぼちや》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)又|乙《おつ》で

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「行《ゆ》かないんだから」は底本では「行《ゆか》かないんだから」]
−−

 何しろ南瓜《かぼちや》が人を殺す世の中なんだから、驚くよ。どう見たつて、あいつがそんな大《だい》それた真似をしようなんぞとは思はれないぢやないか。なにほんものの南瓜《かぼちや》か? 冗談《じようだん》云つちやいけない。南瓜は綽号《あだな》だよ。南瓜の市兵衛《いちべゑ》と云つてね。吉原《よしはら》ぢや下つぱの――と云ふよりや、まるで数《かず》にはいつてゐない太鼓持《たいこもち》なんだ。
 そんな事を聞く位ぢや、君はあいつを見た事がないんだらう。そりや惜しい事をしたね。もう今ぢや赤い着物を着てゐるだらうから、見たいつたつて、ちよいとは見られるもんぢやない。頭でつかちの一寸法師《いつすんぼふし》見たいなやつでね、夫《それ》がフロツクに緋天鳶絨《ひびろうど》のチヨツキと云ふ拵《こしら》
次へ
全8ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
芥川 竜之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング