金糸雀《かなりや》
理髪店の店さきには、朝日の光がさわやかに、万年青《おもと》の鉢を洗つてゐる。鋏《はさみ》の音、水の音、新聞紙を拡げる音、――その音の中に交《ま》じるのは、籠一ぱいに飛びまはる、お前たちの囀《さへづ》り声、――誰だい、今|親方《おやかた》に挨拶した新造《しんぞ》は?
羊
或日おれは檻《をり》の羊に、いろいろな本を食はせてやつた。聖書、Une Vie, 唐詩選《たうしせん》、――何《なん》でも羊は食つてしまふ。が、その中にたつた一つ、いくら鼻の先へ出してやつても、食はない本があると思つたら、それはおれの小説集だつた。覚えてゐろよ。綿細工《わたざいく》め。
[#地から1字上げ](大正九年九月)
底本:「筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻」筑摩書房
1971(昭和46)年6月5日初版第1刷発行
1979(昭和54)年4月10日初版第11刷発行
入力:土屋隆
校正:松永正敏
2007年6月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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