々《しらしら》と舞ひ上《あが》るお前たち三羽の翼の色。――皿の外までも飛び出さなければ好《い》いが。
河馬《かば》
挙《こ》す。梁《りよう》の武帝《ぶてい》、達磨大師《だるまだいし》に問ふ。如何《いかん》か是《これ》仏法《ぶつぽう》。磨《ま》云ふ。水中の河馬《かば》。
ぺングイン
お前は落魄《らくはく》した給仕人だ。悲しさうなお前の眼の中には、以前勤めてゐたホテルの大食堂が、今も Aurora australis のやうに、輝かしい過去の幻を浮き上らせる事がありはしないか?
馬
凩《こがらし》の吹く町の角《かど》には、青銅《からかね》のお前に跨《またが》つた、やはり青銅《からかね》の宮殿下が、寒むさうな往来《わうらい》の老若男女《らうにやくなんによ》を、揚々と見|下《おろ》して御出《おい》でになる。さうしてその宮殿下の、軍服を召した御胸《おむね》には、恐れながら白い鴉《からす》の糞《ふん》が、……
梟《ふくろふ》
Brocken 山《ざん》へ! 箒《はうき》に跨《またが》つた婆《ばあ》さんが、赤い月のかかつた空へ、煙突から一文字《いちもんじ》に舞ひ上《あが》る。と、その後《うしろ》から一羽の梟《ふくろふ》が――いや、これは婆さんの飼ひ猫が何時《いつ》の間《ま》にか翼を生やしたのかも知れない。
金魚
うす日の光がさして来ると、藻に立つた秋も目立つやうになつた。おれは、――所々|鱗《うろこ》の剥《は》げた金魚は、やがてはこの冷たい水の上に、屍《むくろ》を曝《さら》す事になるのかも知れない。しかしさう云ふ最後の日までは、やはり先の切れた尾を振りながら、あの洒落者《しやれもの》のブラムメルのやうに、悠々と泳いでゐようと思ふ。
兎
今昔物語《こんじやくものがたり》巻五《まきのご》、三獣行菩薩道兎焼身語《さんじうぼさつのみちをおこなひうさぎみをやくものがたり》と云ふ 〔Ja_taka〕 の中に、こんなお前の肖像画がある。――「兎は励みの心を発《おこ》して、……耳は高く※[#「やまいだれ+區」、第4水準2−81−70]《くぐ》せにして、目は大きく前の足短く、尻の穴は大きく開いて、東西南北求め歩けども、更に求め得たるものなし……」
雀
これは南画《なんぐわ》だ。蕭々《せう
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