《まつ》の光は、一しきり赤くゆらぎながら、忽ち狹い※[#「車+非」、第4水準2−89−66]《はこ》の中を鮮かに照し出しましたが、※[#「車+因」、第4水準2−89−62]《とこ》の上に慘《むごた》らしく、鎖にかけられた女房は――あゝ、誰か見違へを致しませう。きらびやかな繍のある櫻の唐衣にすべらかしの黒髮が艷やかに垂れて、うちかたむいた黄金の釵子《さつし》も美しく輝いて見えましたが、身なりこそ違へ、小造りな體つきは、色の白い頸のあたりは、さうしてあの寂しい位つゝましやかな横顏は、良秀の娘に相違ございません。私は危く叫び聲を立てようと致しました。
 その時でございます。私と向ひあつてゐた侍は慌しく身を起して、柄頭《つかがしら》を片手に抑へながら、屹と良秀の方を睨みました。それに驚いて眺めますと、あの男はこの景色に、半ば正氣を失つたのでございませう。今まで下に蹲《うづくま》つてゐたのが、急に飛び立つたと思ひますと、兩手を前へ伸した儘、車の方へ思はず知らず走りかゝらうと致しました。唯生憎前にも申しました通り、遠い影の中に居りますので、顏貌《かほかたち》ははつきりと分りません。しかしさう思つた
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