、何度となく丁寧に頭を下げてゐるのでございました。
十四
するとその晩の出來事があつてから、半月ばかり後の事でございます。或日良秀は突然御邸へ參りまして、大殿樣へ直《ぢき》の御眼通りを願ひました。卑しい身分のものでございますが、日頃から格別御意に入つてゐたからでございませう。誰にでも容易に御會ひになつた事のない大殿樣が、その日も快く御承知になつて、早速御前近くへ御召しになりました。あの男は例の通り、香染めの狩衣に萎《な》えた烏帽子を頂いて、何時もよりは一層氣むづかしさうな顏をしながら、恭しく御前へ平伏致しましたが、やがて嗄れた聲で申しますには
「兼ね/″\御云ひつけになりました地獄變の屏風でございますが、私も日夜に丹誠を抽んでて、筆を執りました甲斐が見えまして、もはやあらましは出來上つたのも同前でございまする。」
「それは目出度い。予も滿足ぢや。」
しかしかう仰有《おつしや》る大殿樣の御聲には、何故《なぜ》か妙に力の無い、張合のぬけた所がございました。
「いえ、それが一向目出度くはござりませぬ。」良秀は、稍腹立しさうな容子でぢつと眼を伏せながら、「あらましは出來上
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