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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)樗牛《ちょぎゅう》の事

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)感慨|悲慟《ひどう》するところがあった

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「りっしんべん+淌のつくり」、第3水準1−84−54]
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       一

 中学の三年の時だった。三学期の試験をすませたあとで、休暇中読む本を買いつけの本屋から、何冊だか取りよせたことがある。夏目先生の虞美人草《ぐびじんそう》なども、その時その中に交っていたかと思う。が、中でもいちばん大部だったのは、樗牛全集の五冊だった。
 自分はそのころから非常な濫読家だったから、一週間の休暇の間に、それらの本を手に任せて読み飛ばした。もちろん樗牛全集の一巻、二巻、四巻などは、読みは読んでもむずかしくって、よく理窟《りくつ》がのみこめなかったのにちがいない。が、三巻や五巻などは、相当の興味をもって、しまいまで読み通すことができたように記憶する。
 その時、はじめて樗牛に接
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