捨てて逃げた黒木|閑斎《かんさい》は、扶持《ふち》を召上げられた上、追放になった。

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 修理《しゅり》の刃傷《にんじょう》は、恐らく過失であろう。細川家の九曜《くよう》の星と、板倉家の九曜の巴と衣類の紋所《もんどころ》が似ているために、修理は、佐渡守を刺《さ》そうとして、誤って越中守を害したのである。以前、毛利主水正《もうりもんどのしょう》を、水野|隼人正《はやとのしょう》が斬ったのも、やはりこの人違いであった。殊に、手水所《ちょうずどころ》のような、うす暗い所では、こう云う間違いも、起りやすい。――これが当時の定評であった。
 が、板倉佐渡守だけは、この定評をよろこばない。彼は、この話が出ると、いつも苦々しげに、こう云った。
「佐渡は、修理に刃傷されるような覚えは、毛頭《もうとう》ない。まして、あの乱心者のした事じゃ。大方《おおかた》、何と云う事もなく、肥後侯を斬ったのであろう。人違などとは、迷惑至極な臆測じゃ。その証拠には、大目付の前へ出ても、修理は、時鳥《ほととぎす》がどうやら云うていたそうではないか。されば、時
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