確かである。いや、得々と諸君の前に僕の発見を誇らうとする人の声に外ならぬかも知れない。しかし僕の文章を機会に、正真正銘の天の声の「家康と直弼」を讃美することは必しもないとは云ひ難いであらう。して見れば僕の文章は中道に倒れた先達の為にも多少の回向にはなる筈である。云はば僕は孤墳の所在を出来るだけ叮嚀に指し示した。この寂しい孤墳の前に、人々の礼するのはいつのことであらう? 更に又無数の花束の手向けられるのはいつのことであらう?



底本:「芥川龍之介全集 第十一巻」岩波書店
   1996(平成8)年9月9日発行
底本の親本:「梅・馬・鶯」新潮社
   1926(大正15)年12月25日発行
初出:(上)「女性改造 第三巻第五号」
   1924(大正13)年5月1日発行
   (下)「女性改造 第三巻第六号」
   1924(大正13)年6月1日発行
※「女性改造」連載の文芸講話「僻見」の第三章として掲載された。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:もりみつじゅんじ
校正:土屋隆
2008年12月3日作成
青空文庫作成ファイル:
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