続西方の人
芥川龍之介
--
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)傚《なら》へと
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)或|苛立《いらだ》たしさを
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)妥協[#「妥協」に傍点]のもとに
--
1 再びこの人を見よ
クリストは「万人の鏡」である。「万人の鏡」と云ふ意味は万人のクリストに傚《なら》へと云ふのではない。たつた一人のクリストの中に万人の彼等自身を発見するからである。わたしはわたしのクリストを描き、雑誌の締め切日の迫つた為にペンを抛《なげう》たなければならなかつた。今は多少の閑《ひま》のある為にもう一度わたしのクリストを描き加へたいと思つてゐる。誰もわたしの書いたものなどに、――殊《こと》にクリストを描いたものなどに興味を感ずるものはないであらう。しかしわたしは四福音書の中にまざまざとわたしに呼びかけてゐるクリストの姿を感じてゐる。わたしのクリストを描き加へるのもわたし自身にはやめることは出来ない。
2 彼の伝記作者
ヨハネはクリストの伝記作者中、最も彼自
次へ
全20ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
芥川 竜之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング