槍ヶ嶽紀行
芥川龍之介
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)島々《しま/\》と
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)三十|恰好《がつこう》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「山+賛」、145−上−13]※[#「山+元」、第3水準1−47−69]《さんぐわん》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)しま/\
−−
一
島々《しま/\》と云ふ町の宿屋へ着いたのは、午過ぎ――もう夕方に近い頃であつた。宿屋の上《あが》り框《かまち》には、三十|恰好《がつこう》の浴衣の男が、青竹の笛を鳴らしてゐた。
私《わたし》はその癇高い音《ね》を聞きながら、埃にまみれた草鞋の紐を解いた。其処へ婢《をんな》が浅い盥《たらひ》に、洗足の水を汲んで来た。水は冷たく澄んだ底に、粗い砂を沈めてゐた。
二階の縁側の日除けには、日の光が強く残つてゐた。そのせゐか畳も襖も、残酷な程むさくるしく見えた。夏服を浴衣に着
次へ
全11ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
芥川 竜之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング