だけぼんやりと曇ってしまう。
16[#「16」は縦中横]
飾り窓の中の鬼百合の花。ただし後ろは暗である。鬼百合の花の下に垂れている莟《つぼみ》もいつか次第に開きはじめる。
17[#「17」は縦中横]
「わたしの美しさを御覧なさい。」
「だってお前は造花じゃないか?」
18[#「18」は縦中横]
角《かど》から見た煙草屋の飾り窓。巻煙草の缶《かん》、葉巻の箱、パイプなどの並んだ中に斜めに札《ふだ》が一枚懸っている。この札に書いてあるのは、――「煙草の煙は天国の門です。」徐《おもむ》ろにパイプから立ち昇《のぼ》る煙。
19[#「19」は縦中横]
煙の満ち充ちた飾り窓の正面《しょうめん》。少年はこの右に佇《たたず》んでいる。ただしこれも膝の上まで。煙の中にはぼんやりと城が三つ浮かびはじめる。城は Three Castles の商標を立体にしたものに近い。
20[#「20」は縦中横]
それ等の城の一つ。この城の門には兵卒が一人銃を持って佇んでいる。そのまた鉄格子《てつ
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