のさはつた手を動かさずにゐたのでも、わかるだらう。……
なに吉原の太夫? 太夫はまるでそれと反対な、小さい、人形のやうな、女だつた。
下
世之助 まづざつと、こんなものだつた。そこで、それ以来、その女のやうなものを関係した中へ勘定したから、合せて男女《なんによ》四干四百六十七人に戯れた事になると云ふ次第さ。
友だち 成程、さう聞けば尤もらしい。だが……
世之助 だが、何だい。
友だち だが、物騒《ぶつさう》な話ぢやないか。さうなると、女房や娘はうつかり外へも出されない訳だからね。
世之助 物騒でも、それがほんたうなのだから、仕方がない。
友だち して見ると、今にお上から、男女同席御法度《なんによどうせきごはつと》の御布令《おふれ》でも出かねなからう。
世之助 この頃のやうぢや、その中に出るかも知れないね。が、出る時分には、私はもう女護《によご》ヶ島《しま》へ行つてゐる。
友だち 羨《うらやま》せるぜ。
世之助 なに女護ヶ島へ行つたつて、ここにゐたつて、大してかはりはしない。
友だち 今の算盤《そろばん》のとり方にすれば、さうだらう。
世之助 どうせ何でも泡沫夢幻《はうま
前へ
次へ
全16ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
芥川 竜之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング