水の三日
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)罹災民《りさいみん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)何百|膳《ぜん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「勹<夕」、第3水準1−14−76]
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 講堂で、罹災民《りさいみん》慰問会の開かれる日の午後。一年の丙組(当日はここを、僕ら――卒業生と在校生との事務所にした)の教室をはいると、もう上原君と岩佐君とが、部屋《へや》のまん中へ机をすえて、何かせっせと書いていた。うつむいた上原君の顔が、窓からさす日の光で赤く見える。入口に近い机の上では、七条君や下村君やその他僕が名を知らない卒業生諸君が、寄附の浴衣《ゆかた》やら手ぬぐいやら晒布《さらし》やら浅草紙やらを、罹災民に分配する準備に忙しい。紺飛白《こんがすり》が二人でせっせと晒布をたたんでは手ぬぐいの大きさに截《き》っている。それを、茶の小倉の袴《はかま》が、せっせと折目をつけては、行儀よく積み上げている。向こうのすみ
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