春の心臓
THE HEART OF THE SPRING
ウィリアム・バトラー・イエーツ William Butler Yeats
芥川龍之介訳

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)榛《はしばみ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)小さな※[#「木+解」、第3水準1−86−22]《かしわ》
−−

 一人の老人が瞑想に耽りながら、岩の多い岸に坐つてゐる。顔には鳥の脚のやうに肉がない。処はジル湖の大部を占める、榛《はしばみ》の林に掩はれた、平な島の岸である、其傍には顔の赭《あか》い十七歳の少年が、蠅を追つて静な水の面をかすめる燕《つばくら》の群を見守りながら坐つてゐる。老人は古びた青天鵞絨を、少年は青い帽子に粗羅紗《フリイズ》の上衣をきて、頸には青い珠の珠数をかけてゐる。二人のうしろには、半ば木の間にかくれた、小さな修道院がある。女王に党《くみ》した涜神な人たちが、此僧院を一炬《いつきよ》に附したのは、遠い昔の事である。今は此少年が再び燈心草の屋根を葺いて
次へ
全11ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
芥川 竜之介 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング