る。
然し、それらの小説を鑑賞する時に、僕の評価を決定するものは必ずしも、それらの気持ではない。若し僕が(読者として)世間の小説の読者と違つてゐるとするならば、かう云ふ点にあると思つてゐる。では何が僕の評価を決定するかと云へば感銘《かんめい》の深さとでも云ふほかはない。それには筋の面白さとか、僕自身の生活に遠いこととか、或はまた僕自身の生活に近いこととか云ふことも勿論、幾分か影響してゐるだらう。然しそれらの影響のほかに未《ま》だ何かあることを信じてゐる。
この何かに動かされる読者の一群《いちぐん》が、つまり読書階級と呼ばれるのである。或は文芸的知識階級と呼ばれるのである。
かう云ふ階級は存外《ぞんぐわい》狭い。おそらくは、西洋よりも一層狭いだらう。僕は今、かう云ふ事実の善悪を論じてゐるのではない。唯事実として一寸《ちよつと》話すだけである。
[#地から1字上げ](昭和二年三月)
底本:「筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻」筑摩書房
1971(昭和46)年6月5日初版第1刷発行
1979(昭和54)年4月10日初版第11刷発行
入力:土屋隆
校正:松永正敏
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