一層増加するは言ふを待たず。然れども畢《つひ》に交合は必然に産児を伴ふ以上、男子には冒険でも何《なん》でもなけれど、女人には常に生死を賭《と》する冒険たるを免《まぬか》れざるべし。若《も》し常に生死を賭《と》する冒険たるを免れずとせば、絶対に交合を恐れざるは常人の善《よ》くする所にあらざるなり。よし又天下の女人にして悉《ことごとく》交合を恐れざること、入浴を恐れざるが如きに至るも、そは少しも娼婦型の女人の増加せる結果と云ふこと能はず。何《なん》となれば娼婦型の女人は啻《ただ》に交合を恐れざるのみならず、又実に恬然《てんぜん》として個人的威厳を顧みざる天才を具《そな》へざる可《べか》らざればなり。教坊《けうばう》十万の妓《ぎ》は多しと雖《いへど》も、真に娼婦型の女人を求むれば、恐らくは甚だ多からざる可《べ》し。天下も亦《また》教坊と等しきのみ。旦《あした》に呉客《ごかく》の夫人となり、暮《くれ》に越商《ゑつしやう》の小星《せうせい》となるも、豈《あに》悉《ことごとく》病的なる娼婦型の女人と限る可《べ》けんや。この故に僕は娼婦型の婦人の増加せる事実を信ずる能はず。況《いはん》や貴問に答ふる
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