クの中に高だかと艦首を擡《もた》げていた。彼の前には巡洋艦や駆逐艇が何隻も出入《しゅつにゅう》していた。それから新らしい潜航艇や水上飛行機も見えないことはなかった。しかしそれ等は××には果《はか》なさを感じさせるばかりだった。××は照ったり曇ったりする横須賀軍港を見渡したまま、じっと彼の運命を待ちつづけていた。その間《あいだ》もやはりおのずから甲板のじりじり反《そ》り返って来るのに幾分か不安を感じながら。……
[#地から1字上げ](昭和二年六月十日)
底本:「芥川龍之介全集6」ちくま文庫、筑摩書房
1987(昭和62)年3月24日第1刷発行
1993(平成5)年2月25日第6刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版芥川龍之介全集」筑摩書房
1971(昭和46)年3月〜11月刊行
入力:j.utiyama
校正:多羅尾伴内
2004年1月5日作成
青空文庫作成ファイル:
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