首が落ちた話
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)何小二《かしょうじ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)時々|鶉《うずら》の群《むれ》が

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「木+霸」、第3水準1−86−28]
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        上

 何小二《かしょうじ》は軍刀を抛《ほう》り出すと、夢中で馬の頸《くび》にしがみついた。確かに頸を斬られたと思う――いや、これはしがみついた後で、そう思ったのかも知れない。ただ、何か頸へずん[#「ずん」に傍点]と音を立てて、はいったと思う――それと同時に、しがみついたのである。すると馬も創《きず》を受けたのであろう。何小二が鞍の前輪へつっぷすが早いか、一声高く嘶《いなな》いて、鼻づらを急に空へ向けると、忽《たちま》ち敵味方のごったになった中をつきぬけて、満目の高粱畑《こうりょうばたけ》をまっしぐらに走り出した。二三発、銃声が後《うしろ》から響いたように思われるが、それも彼の耳には、夢
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