剛才人と柔才人と
芥川龍之介

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【テキスト中に現れる記号について】

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(例)小島[#「小島」に丸傍点]君も
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 佐佐木君は剛才人、小島君は柔才人、兎に角どちらも才人です。僕はいつか佐佐木君と歩いていたら、佐佐木君が君に突き当った男へケンツクを食わせる勢を見、少からず驚嘆しました。実際その時の佐佐木君の勢は君と同姓の蒙古王の子孫かと思う位だったのです。小島[#「小島」に丸傍点]君も江戸っ児ですから、啖呵を切ることはうまいようです。しかし小島[#「小島」に丸傍点]君の喧嘩をする図などはどうも想像に浮びません。それから又どちらも勉強家です。佐佐木君は二三日前にこゝにいましたが、その間も何とか云うピランデロの芝居やサラア・ベルナアルのメモアの話などをし、大いに僕を啓発してくれました。小島[#「小島」に丸傍点]君も和漢東西に通じた読書家です。これは小島[#「小島」に丸傍点]君の小説よりも寧ろ小島[#「小島」に丸傍点]君のお伽噺に看取出来ることゝ思います。最後にどちらも好い体で(これは僕が病中故、特にそう思うのかも知れず。)長命の相
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