曇らせた。が、それは文字通り、一瞬間に過ぎなかつた。僕がまだ何とも答へない内に、氏の眼には忽《たちま》ち前のやうな溌剌たる光が還《かへ》つて来た。と同時に泡鳴氏は恰《あたか》も天下を憐れむが如く、悠然とかう云ひ放つた。
「尤も僕の小説はむづかしいからな。」
詩人、小説家、戯曲家、評論家、――それらの資格は余人がきめるが好い。少くとも僕の眼に映じた我岩野泡鳴氏は、殆《ほとん》ど荘厳な気がする位、愛すべき楽天主義者だつた。
底本:「芥川龍之介全集 第九巻」岩波書店
1996(平成8)年7月8日発行
入力:もりみつじゅんじ
校正:松永正敏
2002年5月17日作成
青空文庫作成ファイル:
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