河童
芥川龍之介

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)のけ反《ぞ》らせ

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)退屈|凌《しの》ぎ

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#感嘆符三つ、113−1]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いよ/\
−−

       どうか Kappa と発音して下さい。


[#7字下げ]序[#「序」は中見出し]

 これは或精神病院の患者、――第二十三号が誰にでもしやべる話である。彼はもう三十を越してゐるであらう。が、一見した所は如何にも若々しい狂人である。彼の半生の経験は、――いや、そんなことはどうでも善い。彼は唯ぢつと両膝をかかへ、時々窓の外へ目をやりながら、(鉄格子をはめた窓の外には枯れ葉さへ見えない樫の木が一本、雪曇りの空に枝を張つてゐた。)院長のS博士や僕を相手に長々とこの話をしやべりつづけた。尤も身ぶりはしなかつた訣ではない。彼はたとへば「驚いた」と言ふ時に
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