れからこの本も哲学者のマツグがわざわざ持つて来てくれたものです。ちよつと最初の詩を読んで御覧なさい。いや、あなたは河童の国の言葉を御存知になる筈はありません。では代りに読んで見ませう。これは近頃出版になつたトツクの全集の一冊です。――
(彼は古い電話帳をひろげ、かう云ふ詩をおほ声に読みはじめた。)
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――椰子の花や竹の中に
仏陀はとうに眠つてゐる。
路ばたに枯れた無花果と一しよに
基督ももう死んだらしい。
しかし我々は休まなければならぬ
たとひ芝居の背景の前にも。
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(その又背景の裏を見れば、継ぎはぎだらけのカンヴアスばかりだ。!)――
[#ここで字下げ終わり]
けれども僕はこの詩人のやうに厭世的ではありません。河童たちの時々来てくれる限りは、――ああ、このことは忘れてゐました。あなたは僕の友だちだつた裁判官のペツプを覚えてゐるでせう。あの河童は職を失つた後、ほんたうに発狂してしまひました。何でも今は河童の国の精神病院にゐると云ふことです。僕はS博士さへ承知してくれれば、見舞ひに行つてやりたいのですがね…………
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