横須賀小景
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)生海苔《なまのり》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)大きい※[#ローマ数字VI、1−13−26]
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カフエ
僕は或カフエの隅に半熟の卵を食べてゐた。するとぼんやりした人が一人、僕のテエブルに腰をおろした。僕は驚いてその人をながめた。その人は妙にどろりとした、薄い生海苔《なまのり》の洋服を着てゐた。
虹
僕はいつも煤《すす》の降る工廠《こうしやう》の裏を歩いてゐた。どんより曇つた工廠の空には虹が一すぢ消えかかつてゐた。僕は踵《かかと》を擡《もた》げるやうにし、ちよつとその虹へ鼻をやつて見た。すると――かすかに石油の匂がした。
五分間写真
僕は或晩春の午後、或若い海軍中尉と五分間写真を映しに行つた。写真はすぐに出来上つた。しかし印画に映つたのは大きい※[#ローマ数字VI、1−13−26]といふ羅馬《ロオマ》数字だつた。
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