芋粥
芥川龍之介
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)元慶《ぐわんぎやう》の末か
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)藤原|基経《もとつね》に
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「火+(世/木)」、第3水準1−87−56]栗《ゆでぐり》
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元慶《ぐわんぎやう》の末か、仁和《にんな》の始にあつた話であらう。どちらにしても時代はさして、この話に大事な役を、勤めてゐない。読者は唯、平安朝と云ふ、遠い昔が背景になつてゐると云ふ事を、知つてさへゐてくれれば、よいのである。――その頃、摂政《せつしやう》藤原|基経《もとつね》に仕へてゐる侍《さむらひ》の中に、某《なにがし》と云ふ五位があつた。
これも、某と書かずに、何の誰と、ちやんと姓名を明にしたいのであるが、生憎《あいにく》旧記には、それが伝はつてゐない。恐らくは、実際、伝はる資格がない程、平凡な男だつたのであらう。一体旧記の著者などと云ふ者は、平凡な人間や話に、余り興味を持たなかつ
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