いに木馬を飛び下りるが好《よ》い。――いわば小えんも一思いに、実生活の木馬を飛び下りたんだ。この猛烈な歓喜や苦痛は、若槻如き通人の知る所じゃない。僕は人生の価値を思うと、百の若槻には唾《つば》を吐いても、一の小えんを尊びたいんだ。
「君たちはそう思わないか?」
和田は酔眼《すいがん》を輝かせながら、声のない一座を見まわした。が、藤井はいつのまにか、円卓《テエブル》に首を垂らしたなり、気楽そうにぐっすり眠《ね》こんでいた。
[#地から1字上げ](大正十一年六月)
底本:「芥川龍之介全集5」ちくま文庫、筑摩書房
1987(昭和62)年2月24日第1刷発行
1995(平成7)年4月10日第6刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版芥川龍之介全集」筑摩書房
1971(昭和46)年3月〜1971(昭和46)年11月
入力:j.utiyama
校正:かとうかおり
1999年1月10日公開
2004年3月8日修正
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