芥川 竜之介
或阿呆の一生
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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)梯子《はしご》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)又|歓《よろこ》びも

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「木+解」、第3水準1−86−22]《かし》
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 僕はこの原稿を発表する可否は勿論、発表する時や機関も君に一任したいと思つてゐる。
 君はこの原稿の中に出て来る大抵の人物を知つてゐるだらう。しかし僕は発表するとしても、インデキスをつけずに貰ひたいと思つてゐる。
 僕は今最も不幸な幸福の中に暮らしてゐる。しかし不思議にも後悔してゐない。唯僕の如き悪夫、悪子、悪親を持つたものたちを如何《いか》にも気の毒に感じてゐる。ではさやうなら。僕はこの原稿の中では少くとも意識的[#「意識的」に傍点]には自己弁護をしなかつたつもりだ。
 最後に僕のこの原稿を特に君に托するのは君の恐らくは誰よりも僕を知つてゐると思ふからだ。(都会人と云ふ僕の皮を剥《は》ぎ
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