ノウチガイジユリヤクキヨダイジユニコタウルノゴ》―
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一
破提宇子《はでうす》と云う天主教を弁難した書物のある事は、知っている人も少くあるまい。これは、元和《げんな》六年、加賀の禅僧|巴※[#「田+比」、第3水準1−86−44]※[#「合/廾」、第3水準1−84−19]《はびあん》なるものの著した書物である。巴※[#「田+比」、第3水準1−86−44]※[#「合/廾」、第3水準1−84−19]は当初|南蛮寺《なんばんじ》に住した天主教徒であったが、その後何かの事情から、|DS 如来《でうすにょらい》を捨てて仏門に帰依《きえ》する事になった。書中に云っている所から推すと、彼は老儒の学にも造詣《ぞうけい》のある、一かどの才子だったらしい。
破提宇子《はでうす》の流布本《るふぼん》は、華頂山文庫《かちょうさんぶんこ》の蔵本を、明治|戊辰《ぼしん》の頃、杞憂道人《きゆうどうじん》鵜飼徹定《うがいてつじょう》の序文と共に、出版したものである。が、そのほかにも異本がない訳ではない。現に予が所蔵の古写本の如きは、流布本と内容を異にする個所が多少
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