身辺雑記
尾形亀之助
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【テキスト中に現れる記号について】
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(例)一部分[#「部分」に「ママ」の注記]
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九月、十月、それから十一月とはなつた。隣家の門にからんだ蔦が這つて来て庭の一間ほどの竹垣で海老茶に枯れてゐる。雨が降る度に天井と畳と障子がぬれる。引越すつもりであつたが、そのうちには引越すことになつてしまつた。何のことはないのである。
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こゝに一つの変な文章がある。或る描写論なのである。私はその一部分[#「部分」に「ママ」の注記]書き写して「左の一文を解釈せよ」といふやうなことで薄謝を呈することにして何処かの雑誌に掲載するつもりであつた。が、金がなくなつたので中止することになつた。審査は春山行夫君にたのむつもりであつた。で、薄謝を呈することが出来得なくなつたが、せつかく思ひついたことがらであるから、その変な文章の初め二三行を書き写す。興ある読者はひまをつぶされるがよい。
「描写は決定することに成功してそこにそれが結合されるに到つたまで描写することがあるやうにせんがため描写を研究しながら、そして描写のなかに
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