#「え」に「ママ」注記]なれば直ぐにも初まるのです
ベルをならすのは誰れです
××
夜の花をもつ少女の登場で
私は山高をかるくかぶつて相手役です
少女は静かに私に歩み寄ります
そして
そつと私の肩に手をかける少女と共に
私は眠り――かけるのです
そして次第に夜の花の数がましてくる
九月の詩
昼寝
かうばしい本のにほひ
おばけが鏡をのぞいてゐた
黄色の袋の中
闇み[#「み」に「ママ」注記]を
小い[#「い」に「ママ」注記]さい黄色の袋の中に畜[#「畜」に「ママ」注記]つた
そして
よく親しんでみると
かすかな温[#「温」に「ママ」注記]くみをためてひつそりとしてゐます
この不透明なくろい生きものは
小い[#「い」に「ママ」注記]さい黄色の袋の中に腰をかけて
煙りをいつぱいにして
煙草をのんでゐることがあるのです
雨 雨
DORADORADO――
TI−TATATA−TA
TI−TOTOTO−TO
DORADORADO
TI−TOTOTO−TO
DORADORADO――
雨は
ガラスの花
雨は
いちんち眼鏡をかけて
年のくれの街
街は夕方ちかかつた
風もないのに
寒む[#「む」に「ママ」注記]さは服の上からしみこんでくる
何とまあ――沢山の奥さん方は
お買物ですか
まるでねずみのやうに集つて
左側を通つて下さい
左側を――
左側を通らない人にはチヨウクでしるしをつけます
情慾
何んでも私がすばらしく大きい立派な橋を渡りかけてゐました ら――
向ふ[#「ふ」に「ママ」注記]側から猫が渡つて来ました
私は ここで猫に出逢つてはと思ふと
さう思つたことが橋のきげんをそこねて
するすると一本橋のやうに細くなつてしまひました
そして
気がつくと私はその一本橋の上で
びつしよりぬれた猫に何か話しかけられてゐました
そして猫には
すきをみては私の足にまきつこ[#「こ」に「ママ」注記]うとするそぶりがあるのです
毎夜月が出た
1−
月が出て 夜が青く光つてゐる
はつきり生きてゐるとは云へないが 肉色のものが 数へきれないほど奇妙な形をして動いてゐる
何か悩や[#「や」に「ママ」注記]んででもゐるやうに そしてどこかしらに性のちがひを示して 極く接してゐるものもある
しかしこのときも天性は愉快な夢を見てゐた そして何かわ
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